講師紹介・コメント
会長・講師 : 稻垣 順也(一の会鍼灸院・副院長,大阪医療技術学園専門学校・非常勤講師,森ノ宮医療学園専門学校・非常勤講師)
経絡とは、東洋医学が見出した「体の内側から外側までの間で成立する連動性」の象徴だと思っています。
そして、その連動性を回復・維持・向上させることにより、各人の持ち合わせている本来の力がどのような場面でも発揮されるようにお膳立てをしていくのが鍼灸師の使命だとも思っています。
そこで、そのお膳立てを成し遂げる上での手掛かりになるものとして、『基礎医学講座』では、「東洋医学における人体の生理」「人がなり得る病的状態の全て」「病的状態を引き起こす原因」などについて紹介していきます。
一方、『臨床医学講座』では、まずは診察術から紹介していきますが、『鍼道 一の会』の診察術では、相手の病的状態を区別することだけでなく、そこから一歩進んで、「なぜその人はその病的状態に居着いたまま治れないのか?」という問いへの答えを、その人の肉体自体に求めていくこと……つまり、「その人を病的状態に陥らせている原因としてのツボの病的変化」を探し当てるという点を、当然のことではあるのですが、重視しています。
そのようにして探し当てた「その人を病ませているツボ」を、鍼やお灸によって改善していくことが、人体を調和へと導き、病気を単なる弱さや老いへと変化させ、人生を喜びと共に全うさせることの出来る「真の鍼灸治療」なのではないかという風に、稻垣順也という男は考えております。
副会長・講師 : 江見 木綿子(大阪医専/東洋医学部・教員)
専門学校の専任教員として、鍼灸学校の学生の方と日々学びを共にしています。
けれども学校の授業は時間が限られていて、なかなか教科書以上のことを学ぶのは難しいと感じています。
学校で学んだ東洋医学の知識をさらに深めたい、世界観をもっと理解したいと思う方は、古典を読んで検証することです。検証する際は四診を丁寧に行うこと。
① 古典を読み、②理論を検証し、③丁寧に四診を行うこと。この全てを一の会で実践できます。
鍼灸師8年目の私も東洋医学理論で疑問に思うことや、勉強中のことがまだまだたくさんあります。一の会に参加してくださっている先生方と議論をしながら講座を進め、理解を深めていきます。
講師:尾関 克哉(はりきゅうアロマコア整体 健志堂・院長,JCCA(日本コアコンディショニング協会)マスタートレーナー・A級講師)
陸上競技選手として10年間、中学校体育教師として16年間、体育一筋で歩み続けてきました。そんな私が視覚障害者となり、東洋医学の本質を追究した鍼灸師をめざし臨床を積み重ね16年目に入ります。
「鍼道 一の会」における東洋医学の深い学びと気づきは、体育人としての私と、鍼灸師としての私を見事に融合してくれました。
そして2020年度も「臨床家のための身体学」を担当させて頂くことになりました。「一の会」で学べる東洋医学の人体観を、あなたの手のひらで表現できるお手伝いをさせて頂きます。
「治療家は心身共に健康で最高の実践者であれ」を合い言葉に、最幸の健康共育者を目指しましょう。
今年度の身体学も、私が日々実践している養生法を通して、美しく立つ事を目指します。そして新たな挑戦としては、いろいろと試してみながら体感のよいものをつなげて、一つの養生体操としてまとめたいと思っています。
一緒に治療家としての手をつくり、最幸の感動を共有できる治療家としての身体作りを始めませんか。よき出会いを心待ちにしています。
講師 : 川村 淳子
はじめまして。現在、東洋医療技術教員養成学科で勉強しております、川村と申します。
現代人にとってもなじみのある話題から、東洋医学とのつながり、患者さんの心身への影響、臨床にどう活かしていくのか、日常生活での養生法など、みなさまと一緒に学んでいきたいと思っております。
私自身、「一の会」で学ぶ中で、東洋医学の根底にある先人たちの自然への畏敬の念、ひとのいのちに対する想いの深さに驚き、いのち=「生きる力」に寄り添い、助けるのが、本来の治療の在り方ではないかと思うようになりました。
それはすなわち、国を越え、時代を超え、歴史の中で取捨選択され、形を変え、受け継がれた知識と技術の結晶…
その気の遠くなるような、らせんの先から託された、祈りのような、つながりの核に感じるものを大切にしたい、と考えております。
東洋医学が苦手な方、得意な方、どちらでもかまいません。どうぞ難しく考えずにいらしてください。
学生さんも先生方もリラックスしながら和気あいあいと、いろいろなお話ができる時間になれば、と考えております。
どうぞよろしくお願いいたします。
元代表・相談役 : 金澤 秀光(一の会鍼灸院・院長)
医療界は、洋の東西を問わず、時代の要請に応えるべく発展を続けております。
「鍼道 一の会」では、その発展の一翼を担うべく、伝統医学を足掛かりとして、現代における「気の医学」を一貫して追究しております。
時代は、単に病を治すことにとどまらず、病から「人生における気づきと学び」を得て、より良く充実した人生の歩みへとつなげて行くことを求めていると感じております。
「鍼道 一の会」での必須の学びは、東洋医学の世界観・人体観を意識の礎にすることです。
それは取りも直さず、大自然と人間は一体であることを知ることであり、自然界の様々な「気」の変化とともに人間の「こころ」と「からだ」と「たましい」もまた一体となって移ろう。そのような視線を太極とすることでもあります。(天人合一思想)
鍼灸医学においては、鍼や灸を『気を動かす道具』として直接肉体に働きかけますが、それは同時に「こころ」と「たましい」に新たな気の流れを生じる(=神気が動く)ことを意味します。
神気が大きく動けば、眼前の世界が一変し、病はおろか人生そのものが一変します。
移精変気の法は、伝統医学の真骨頂でもあります。いわば、道術=方術としての鍼灸医学を追求します。
治療者とは、単に病気治しの職人ではありません。治療者・患者相互の境界線を越えた「生き方」の問題としてじっくりと病に取り組み、結果として病を治すだけでなく生き方をも高めて行くことが出来る人間であると考えています。
志あるみなさま、共に手をたずさえて、この鍼の道を歩みましょう!
元副代表・相談役 : 永松 周二(鳳凰堂鍼灸院・院長)
永松先生は、『一の会』発足当時からのメンバーとして、5年間に渡って「易学」と「治療家のための身体学」の講義を担当してくださいました。
「易学」は、東洋思想の根幹をなす部分でありながら、その難解さゆえに入り口で阻まれてしまう場合が多くみられます。
先生は、そこを理解しやすいように、可能な限り日常の出来事に関連付けて説いて下さいました。
また、「治療家のための身体学」では、如何に術者の気を整え、患者の気を捉えるかを、受講生それぞれのレベルに応じてご指導くださいました。
代表・金澤の現在の治療スタイルも、永松先生の身体学から影響を受けた部分が大いにあります。
この度、次々と若い方々が育ってこられたこの機に、後進に道を譲りたいとのことで講師・副代表を辞されましたが、先生からいただいた教えは、今後も「鍼道 一の会」の中で受け継がれていくことと確信しております。
今後は相談役として、縁の下で若い人達の育成に取り組んでくださることになりました。これまでと同様、どうぞよろしくお願いいたします。
(文責:金澤)
顧問 : 安達 悠介(国際東洋医療学院・専任教員)
日本の伝統鍼灸医学は、中国を源流としながらも、日本独自に発展した歴史を持っており、近年の医療界において、最もその躍進が期待される分野です。
医学に限らずどのような分野で活躍するにしろ、自分の根となる基礎理論を盤石にし、そこに根ざしてさらに高度な知識や技術を身につければ、幹は太くしっかりと伸び、豊かに枝葉が繁ります。
このようにして自分の個性が生きる治療スタイルが次第に確立すると、幅広く社会に貢献することができると考えています。
『鍼道 一の会』では、改めて臨床に向けた基礎医学を培い、さらに多方面の講義によって、幹だけでなく枝葉である臨床知識・技術まで幅広く学ぶことができます。
これから鍼灸医学を以て身を立てようとされる多くの学生・先生方にとって、鍼灸医学の流派の壁を超え、医学周辺も含めて多くの事を学べる会であり、社会から必要とされる臨床家への門となると考えています。
『鍼道 一の会』東洋医学講座の理念
古来、鍼灸医学には全科的な、あらゆる病気に対処してきた実績があり、社会的に絶大な信頼を得ていました。
明治開国時代、欧米列強によってアジアに植民地主義の嵐が吹き荒れる中、植民地支配に対抗する必要性から我が国を挙げて近代西洋化が推し進められました。伝統医学もまた政治的情勢の波に飲まれてしまい、ついにはその本来の姿さえ忘れ去られ、今なお本格的復興がなされていないのが今日的状況です。
翻って今日の医療情勢を見渡すと、現代医学は日々進歩し高度な発展を遂げているにもかかわらず、国民の健康度はそれと比例するどころか、むしろ悪化しているとも言えるでしょう。
このような世相にあって『鍼道 一の会』は、今や取り残された遺産である日本の伝統鍼灸に基づき、臨床を通じてこの『未病の医学』の素晴らしさを社会に発信していくとともに、病気を治せる鍼灸師の育成を通じて、広く社会の健康福祉に貢献することを理念としています。
「一の会」の由来
「一」はすべての始まりであるとともに、大自然の複雑極まりない現象もまた「一」に集約することが出来ます。
同じく、病の種類がどれほど多くとも、病者がどのような複雑多岐にわたる症状を呈していても、病の原因は「気の偏在」であるという、ただ一点に集約されます。
我々は、伝統医学を培ってきた歴代の医家と同じ世界観を持ち、同じ視点に立って病を認識し治療を行います。
本講座の目的およびお伝えしたいこと
「一」をつかみ取るための方法としては、まず基礎医学を十分身につける必要があります。
<学>は対象を認識する方法論です。対象をあらゆる方向から認識し、その時々で最も有効な認識方法を瞬時に選択できるだけの東洋医学的背景(知識と経験の積み重ね)が必要です。
<術>は鍼を刺すだけの一見簡素なものであるため、誰にでもすぐに真似ができます。簡素であるからこそ、マニュアル化できない高度な技が求められるのです。それができるのがプロというものです。
この<学>と<術>を、時間をかけて一定身に付け、法を手にすれば、自分で自分を磨き上げていくことが出来ます。
そして、望・聞・問・切の四診を駆使して「気の偏在」を的確に捉え、補瀉に集約して下す一本の鍼の力を知ることが、病気治しの第一歩であり、臨床家として独り立ちする道です。
本講座では、患者さんの願いを叶えることができる=病気を治すことができる鍼灸師の育成、志高く「未病の医学」を標榜する、国士たる人物の育成を目指します。
◆中医学を精密に学習するだけでは十分ではない
中医学は、国家規模で用語の概念が統一され、理論的に高度に整備されています。しかしながら、それは湯液家(漢方薬)のために作られたものであり、鍼灸に応用するところに無理があります。
それは中医学の鍼灸医学書に、腹診・背部兪穴診・原穴診など、実際に患者が現す体表観察が大きく欠落していることからも窺えます。これは直接患者の身体に触れ、全身の「気の偏在」を視野に入れ、そこから伝わってくる感覚を最も重要視する鍼灸臨床にとって、決定的な欠損分野です。
問診と脈診を主にして導き出した『証』に対して「鍼灸配穴」を処方するなどというのは、個々人の心身が多様に表現する個体差を無視したものであるともいえます。
また、中医学は唯物論を基礎としているため、目に見えない「気」が体表に現れているという事実を捉える方法論を持ち合わせていないという面もあります。
鍼灸医学の強みは、直接患者さんの身体に触れることができるという点です。
中医学を臨床に活かすには、中医学理論を自然界や人体に置きかえてイメージできること、内経思想を背景にして患者の身体に触れ、多様に変化する『気の偏在』を直接捉えることが必要不可欠です。
つまり、どのように「気」を動かすかをリアリティーをもって臨むことこそが、あらゆる病気に的確に対応できる臨床力を養うことにつながるのです。
◆具体的に「気」を捉えることがポイント
「気」は必ず具体的な現象を伴います。
たとえば、風は目に見えなくても、木々を揺らしたり、雲の流れを促したり、水面の波などでその存在を知ることができます。
「気」も同様で、人体に現れる症状やお腹・背中・手足・経穴などに現れる具体的な現象(緊張・弛緩・寒熱など)から「気」の偏在を捉えることができます。
そして、それらの情報を虚実・補瀉に集約して鍼ができるようになると、あらゆる病気に対応することが可能になるのです。
本会の目指す内容は、以下の通りです。
○ 中医学で不足していること、すなわち、「気」を具体的にリアリティーを持って捉えることが出来る。
○ 臓象学・経絡学を学ぶことで、臓腑の機能が身体にどのような現れ方をするのかを捉えることが出来る。
○ 『気の偏在』を四診で具体的に把握することが出来る。
○ 傷寒論を学ぶことで、病気の病因・病理を明確に、リアリティーを持って理解することが出来る。とりわけ八綱概念の把握に繋がる。
○ 方剤構成を学ぶことで、病態把握を深め、正邪・補瀉の戦略を時系列的に立てることが出来る。
○ 日本の伝統各流派を学ぶことで、認識論が深まり広がる。
○ 臨床家としての資質を高めることが出来る。
○ 自分で行う学習の方向性が明確になる。
○ 患者指導や自分自身の健康維持に役立つ。
○ 具体的な事象に基づいて臨床を行うことが出来、自信が積み重なってくる。
※インスタントな養成は致しません。また、漠然と講座を受けても臨床力は身につきません。
意欲的な予習と復習が必須ですので、ご了解ください。