講師紹介・授業概要
代表 : 金澤 秀光(いおり鍼灸院・院長,大阪医療技術学園専門学校/東洋医療技術教員養成学科・非常勤講師)
発足後まだわずか三年余りの「鍼道 一の会」ですが、現在の学校教育でも広く取り上げられている中医学理論を視野に入れつつ、それをはるかに超える「人間の存在そのもの」を捉える試みを、参加者の皆様と共に模索しながら歩んで参りました。
理は追及しつつも、理では計れない人間の在り様を直感的に捉えるという、一見すると矛盾しているように見えるこの試みは、着実に実を結んでいると感じております。
病を癒す術はもちろん大切なことですし追及すべきことです。
しかし、病は「こころ」を持った人が、生きる中で悩み、迷い、その苦しみの内から生じるものであることを見過ごしてはならないと考えています。
「鍼道 一の会」は、単に病気治しの職人ではなく、自他の境界線を越えた「生き方」の問題として、病に取り組む姿勢を一貫して追求してきました。
中にはまだ学生でありながらも、すでにこれらを踏まえた臨床的な視点を持ち得た方もおられます。
まずは、求めてください。そして一歩、また一歩と、不断に歩みを進めると、必ず応えてくれるのがこの鍼の世界です。
みなさま、共にこの鍼の世界で遊びましょう!
副代表 : 永松 周二(鳳凰堂鍼灸整体院・院長,大阪医療技術学園専門学校/東洋医療技術教員養成学科・非常勤講師)
「治療とは何か?」を根底から考え直すきっかけとして、東洋的な考え方や体の使い方を一緒に学んでいきましょう。
<2018年度「易学」の授業概要>
東洋的な考え方を元にしていない東洋医学が多い中、東洋的な考え方を身につけていくための講義となります。
全ては無極であり、太極である。また無極から太極への過程を楽しむ事に集約されます。
一年終えた時にこの言葉の意味するところを少しでも理解していただけたらと考えています。
この考え方から敷衍して、臓腑経絡学、六経概念等を観ていくと、今までの東洋医学の世界観が更に広がり、伝統の枠組みを踏襲しながらも自由な発想を持てる様になることを目指しています。
<「身体学」の授業概要>
学問を積み重ねた後や臨床で気づく事として、患者へのアプローチから接触、施鍼までの全てが結果に大きく左右するということ。何を目的に、何を捉えるのかといった意識の持ち方の大切さを学びます。
術者の身体操作は、そのまま意識のありようとなって患者に伝わります。「気」を淀みなく流す事で初めて、患者との気の交流ができます。
特に切診では、この事が大変重要になることを先ずは実感していただき、日々の鍛錬法等を教授します。
東洋医学講座・座長 : 稲垣 順也(いおり鍼灸院・副院長,大阪医療技術学園専門学校・非常勤講師,森ノ宮医療学園専門学校・非常勤講師)
真理は、突き詰めて 突き詰めて 突き詰めきって破裂した先に見えてくるようなものだと思っています。
東洋医学についてもそれは同じで、文書の中に真理が在るのではなく、文書を超越した先に真理と呼べるような、尊いものが在るのではないでしょうか。
そんなブレイクスルーに挑戦してみたい人は、良ければ我々と一緒にしっかりと勉強し、東洋医学の混沌に触れ、翻弄され、矛盾や齟齬を楽しみ抜いてみませんか。
「鍼道 一の会」を、鍼灸臨床を楽しみ尽くすための一助として、ご活用いただけたら幸いです。
<2018年度「一の会式・東医理論」の学習内容>
この科目では、鍼灸学校で2015年度から使われ始めた教科書『新版 東洋医学概論』の内容を掘り下げていくことで、言説の本質に迫っていきたいと思います。
理論を、その背景に在った時代や文化とつなぎ合わせながら、学び直すことをしてみましょう。
その作業を通じて、鍼灸臨床の土台たり得る人体観・疾病観・死生観・世界観を構築するのが目標です。
東洋医学講座・講師 : 江見 木綿子(大阪医専・東洋医学部教員)
鍼灸師になってからも、思った通りに東洋医学を実践出来ず悩んできました。
そして患者さんにも、東洋医学がもっと身近に感じてもらえたらいいのにと思って、たくさんの勉強をしました。
ご縁があり「鍼道 一の会」の先生方に出会って勉強する中で、陰陽論などの東洋医学の基本の理論の中に私が探していたものを見つけたように思います。知っているだけでは手に出来なかったものが、今では実感を得るほどのものに変わってきています。
学校で学んだ知識を活かすこと、大切な人を癒したい気持ち、東洋医学を学ぶ楽しさ。そんな思いを持って、私は「鍼道 一の会」で学び続けています。
<2018年度「臓象学」の授業概要>
実際には目に見えるものではない臓象を、内経思想を背景にイメージしていきます。臓象図や臓腑の生理作用から具体的に臓象を捉えることができると、五行論や陰陽、四時とも世界がつながり、臨床に応用する手立てになるのではと考えます。
<2018年度「経絡学」の授業概要>
2017年度の講座からの課題である、正経十二経脈と奇經八脉の関係性と臨床での応用方法について、深めていきます。さらに、経脈流注の漢文について、参加者の方が「読めるようになった」と感動・成長できるよう努めさせていただきたいと思います。
顧問 : 安達 悠介(国際東洋医療学院・専任教員)
日本の伝統鍼灸医学は、中国を源流としながらも、日本独自に発展した歴史を持っており、近年の医療界において、最もその躍進が期待される分野です。
医学に限らずどのような分野で活躍するにしろ、自分の根となる基礎理論を盤石にし、そこに根ざしてさらに高度な知識や技術を身につければ、幹は太くしっかりと伸び、豊かに枝葉が繁ります。
このようにして自分の個性が生きる治療スタイルが次第に確立すると、幅広く社会に貢献することができると考えています。
『一の会』では、改めて臨床に向けた基礎医学を培い、さらに多方面の講義によって、幹だけでなく枝葉である臨床知識・技術まで幅広く学ぶことができます。
これから鍼灸医学を以て身を立てようとされる多くの学生・先生方にとって、鍼灸医学の流派の壁を超え、医学周辺も含めて多くの事を学べる会であり、社会から必要とされる臨床家への門となると考えています。
▶▶「鍼道 一の会」東洋医学講座 2018年度 募集要項・お申し込み方法
『鍼道 一の会』東洋医学講座の理念
古来、鍼灸医学には全科的な、あらゆる病気に対処してきた実績があり、社会的に絶大な信頼を得ていました。
明治開国時代、欧米列強によってアジアに植民地主義の嵐が吹き荒れる中、植民地支配に対抗する必要性から我が国を挙げて近代西洋化が推し進められました。伝統医学もまた政治的情勢の波に飲まれてしまい、ついにはその本来の姿さえ忘れ去られ、今なお本格的復興がなされていないのが今日的状況です。
翻って今日の医療情勢を見渡すと、現代医学は日々進歩し高度な発展を遂げているにもかかわらず、国民の健康度はそれと比例するどころか、むしろ悪化しているとも言えるでしょう。
このような世相にあって『鍼道 一の会』は、今や取り残された遺産である日本の伝統鍼灸に基づき、臨床を通じてこの『未病の医学』の素晴らしさを社会に発信していくとともに、病気を治せる鍼灸師の育成を通じて、広く社会の健康福祉に貢献することを理念としています。
「一の会」の由来
「一」はすべての始まりであるとともに、大自然の複雑極まりない現象もまた「一」に集約することが出来ます。
同じく、病の種類がどれほど多くとも、病者がどのような複雑多岐にわたる症状を呈していても、病の原因は「気の偏在」であるという、ただ一点に集約されます。
我々は、伝統医学を培ってきた歴代の医家と同じ世界観を持ち、同じ視点に立って病を認識し治療を行います。
本講座の目的およびお伝えしたいこと
「一」をつかみ取るための方法としては、まず基礎医学を十分身につける必要があります。
<学>は対象を認識する方法論です。対象をあらゆる方向から認識し、その時々で最も有効な認識方法を瞬時に選択できるだけの東洋医学的背景(知識と経験の積み重ね)が必要です。
<術>は鍼を刺すだけの一見簡素なものであるため、誰にでもすぐに真似ができます。簡素であるからこそ、マニュアル化できない高度な技が求められるのです。それができるのがプロというものです。
この<学>と<術>を、時間をかけて一定身に付け、法を手にすれば、自分で自分を磨き上げていくことが出来ます。
そして、望・聞・問・切の四診を駆使して「気の偏在」を的確に捉え、補瀉に集約して下す一本の鍼の力を知ることが、病気治しの第一歩であり、臨床家として独り立ちする道です。
本講座では、患者さんの願いを叶えることができる=病気を治すことができる鍼灸師の育成、志高く「未病の医学」を標榜する、国士たる人物の育成を目指します。
◆中医学を精密に学習するだけでは十分ではない
中医学は、国家規模で用語の概念が統一され、理論的に高度に整備されています。しかしながら、それは湯液家(漢方薬)のために作られたものであり、鍼灸に応用するところに無理があります。
それは中医学の鍼灸医学書に、腹診・背部兪穴診・原穴診など、実際に患者が現す体表観察が大きく欠落していることからも窺えます。これは直接患者の身体に触れ、全身の「気の偏在」を視野に入れ、そこから伝わってくる感覚を最も重要視する鍼灸臨床にとって、決定的な欠損分野です。
問診と脈診を主にして導き出した『証』に対して「鍼灸配穴」を処方するなどというのは、個々人の心身が多様に表現する個体差を無視したものであるともいえます。
また、中医学は唯物論を基礎としているため、目に見えない「気」が体表に現れているという事実を捉える方法論を持ち合わせていないという面もあります。
鍼灸医学の強みは、直接患者さんの身体に触れることができるという点です。
中医学を臨床に活かすには、中医学理論を自然界や人体に置きかえてイメージできること、内経思想を背景にして患者の身体に触れ、多様に変化する『気の偏在』を直接捉えることが必要不可欠です。
つまり、どのように「気」を動かすかをリアリティーをもって臨むことこそが、あらゆる病気に的確に対応できる臨床力を養うことにつながるのです。
◆具体的に「気」を捉えることがポイント
「気」は必ず具体的な現象を伴います。
たとえば、風は目に見えなくても、木々を揺らしたり、雲の流れを促したり、水面の波などでその存在を知ることができます。
「気」も同様で、人体に現れる症状やお腹・背中・手足・経穴などに現れる具体的な現象(緊張・弛緩・寒熱など)から「気」の偏在を捉えることができます。
そして、それらの情報を虚実・補瀉に集約して鍼ができるようになると、あらゆる病気に対応することが可能になるのです。
本会の目指す内容は、以下の通りです。
○ 中医学で不足していること、すなわち、「気」を具体的にリアリティーを持って捉えることが出来る。
○ 臓象学・経絡学を学ぶことで、臓腑の機能が身体にどのような現れ方をするのかを捉えることが出来る。
○ 『気の偏在』を四診で具体的に把握することが出来る。
○ 傷寒論を学ぶことで、病気の病因・病理を明確に、リアリティーを持って理解することが出来る。とりわけ八綱概念の把握に繋がる。
○ 方剤構成を学ぶことで、病態把握を深め、正邪・補瀉の戦略を時系列的に立てることが出来る。
○ 日本の伝統各流派を学ぶことで、認識論が深まり広がる。
○ 臨床家としての資質を高めることが出来る。
○ 自分で行う学習の方向性が明確になる。
○ 患者指導や自分自身の健康維持に役立つ。
○ 具体的な事象に基づいて臨床を行うことが出来、自信が積み重なってくる。
※インスタントな養成は致しません。また、漠然と講座を受けても臨床力は身につきません。
意欲的な予習と復習が必須ですので、ご了解ください。